特に一九五〇年代は、華やかな四発プロペラ機の時代で、それはまた空の旅が、一部の特権的な層だけのものではなく、一般人でも手が届くものになっていった時代でもある。
フアしむ豪華な旅の歴史を愉V章Iストとコーチ(エコノミー)のニクラス制が、スタンダードになったのもこの時代だった。
 四発プロペラ機が、世界の航空輸送を今日の姿に発展させたのだといえる。
航空ライターの松田均氏は、四発プロペラ旅客機のことを、 「公共交通機関としてはまだまだ補助的な子供に過ぎなかった航空輸送を、国際間や国内幹線に於いて客船や列車に代わる主流、大人の地位に発展させた存在であった」 と書いている。
 そんな四発プロペラ旅客機の中で、ひときわ異彩を放つ存在が、大型の豪華旅客機ボーイング377ストラトクルーザーたった。
 初飛行は一九四七年七月。
まずパンアメリカン航空(当時はパンアメリカンーワールドーエアウェイズ)が、一号機をクリッパー・ゴールデングイトと命名、四九年四月にサンフランシスコ〜ホノルル線に就航させた。
全五六機が生産され、パンナムが最大のユーザーだったが、他にBOAC、AOA(アメリカンーオーバーシーズーエアライン、アメリカン航空の大西洋部門、後にパンナムが買収)、N航空、Y航空でも使われた。
それぞれが独自の内装を施し、豪華な空の旅を演出した。
愛称のストラトクルーザーは、成層圏高速旅客機を意味する。
 ボーイング377は、軍用輸送機C−97の民間版で、C−97はB‐29爆撃機の主翼、エンジン、尾翼、降着装置に、新しい胴体を組み合わせて開発されたものだ。
新設計の胴体は、二つの円を上下につないだ、いわば8の字をひっくり返したような断面をしているのが特徴で、ダブルバブルなどと呼ばれた。
逆立ちしたダルマといった感じである。
上円の直径が三・三五メートル、下円の直径が二・九メートルあり、ここから上の部分が乗客キャビン、下の部分が貨物室とラウンジという二層構造が生まれた。
 スペックは、全幅四三・〇五メートル、全長三三・六三メートル、全高一一・六六メートル、三五〇〇馬力のプラットーアンドーホイットニー製R−4360ワスプーメジャー・エンジンを四基備えていた。
最高速度時速六〇二・八キロメートル、巡航速度時速五四六・三キロメートルという高速を誇り、航続距離は六七五〇キロメートルを超えるという長距離性能だった。
乗員は機長、副操縦士、航空機関士、通信士、航法士の五人とスチュワード、スチュワーデス。
乗客数は全ファーストクラス仕様で五五席、最大一二一席までのレイアウトが可能だった。
 パンナムはキャビンに六一席(またはベッド二七床)、階下のラウンジに一四席という仕様、ユナイテッドは五五席(ベッド二六床)、ラウンジー四席、Nは六一席180ボーイング377ストラトクルーザー(ベッド二四床)、ラウンジー四席、AOAは六〇席(ベッド四五床)、ラウンジー四席、BOACは六〇席(二四床)、ラウンジにコー席という仕様で運航した。
 ハネムーンースイートとラウンジ ハワイールートで活躍したY航空を例に、豪華旅客機ストラトクルーザーの機内レイアウトを見てみよう。
 機首部のコクピットのすぐ後ろには乗員用のトイレットがあり、その後方から乗客キャビンがはじまる。
ユナイテッドは、オールエコノミーならI〇〇席からIコー席のレイアウトが可能なキャビンを、オールファースト五五席のゆったりとした配置にしていた。
コンパートメントの最初は前方キャビン。
八席が配置されていたが、これは基本的にバースーコンパートメントで、夜間には四床のベッドルームになる。
普通のツインベッドよりも幅広く、フォームラバー・マットレス装備だ。
もちろんそれぞれに力士アン付きで、プライバシーを保つことができる。
 その後方は、右舷に女性用、左舷に男性用の化粧室だ。
単なるトイレットではなく、広々としたパウダールームである。
女性用は三つのコンパートメントに分かれており、大きな化粧用鏡付きの鏡台が二つと長椅子ソファを備えたヴァニティ、洗面台と鏡のあるラバトリー、そしてトイレットの各コンパートメントになっていた。
一方、男性用は、壁二面の上方は大きな鏡で覆われており、その下には電源もあって、ここで電気シェーバーが使える。
洗面台には灰皿も備えてあった。
 その後ろが中央キャビンで、ニプラスニの四席配置で二八席。
ユナイテッドでは、ここと後方キャビンに、計五五席のシートをレイアウトしていた。
これらがカスタムーデザインのキャビンで、各社ごとに異なるレイアウトになっている。
ピクチャー・ウィンドウと称するほど大型のキャビン窓も、ストラトクルーザーの特徴で、特にユナイテッド、Nが採用した角型の窓はかなり大きかった。
ちなみに、パンナムはすべて丸型窓、ユナイテツドは前方キャビンだけが丸型窓たった。
 乗降口は、中央と後方のキャビンの間の左舷にあり、乗客はここからタラップを使って乗り降りした。
下層のラウンジに降りる螺旋階段もこの位置にある。
その右舷側かユナイテッド独特のインテリアになっていた。
 通常はここにもシートを配置し、夜間は二段式ベッドにする。
この上段のベッドは、昼間は天井壁面にたたまれているというユニークなものだった。
他のエアラインでは、前方キャビンのベッドにも、このユニークなベッドを採用した。
しかし、ユナイテッドは独白に、この部分にスナックバーを設置したのである。
そのため、好きなときにバラエティ豊かなオードブルや軽食が楽しめる。
このスナックバーでのブッフエは人気だった。
 ユナイテッドではギャレー(機内厨房設備)も当然この位置にあったわけだが、基本デザインでは、ギャレーはキャビンの最後尾に配置されており、パンアメリカン、N、AOAのギャレーは最後尾にあった。
BOACとユナイテッドが、乗降口の反対側にギャレーを配置していた。
ストラトクルーザーのギャレーは、二〇人分の食事を一度に温められるオーブンをはじめ、設備や収納部も充実していた。
 後方キャビンの後ろには、コート収納室、手荷物室、ギャレーを配置するのが通常だった。
しかし、ユナイテッドの仕様だけは違っていた。
最後尾にプライベート個室を設けたのだ。
 ここは両側の高い位置に窓を持つ個室で、三人から四人が掛けられるU字型のソファがあり、夜間はダブルベッドにできた。
テーブルやランプも備え、また独白の化粧室、クロゼットもあった。
ハワイへのハネムーナーには、憧れの個室で、ハネムーンースイートと呼ばれた。
ただし悪天候の時には、もっとも揺れる位置にあったので、口上フーコースター並みの乗り心地だったともいうが。



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